多様な水環境への水辺のすこやかさ指標の展開と深化

Results

研究成果

佐鳴湖湖岸におけるマイクロプラスチック汚染調査

Research member

研究メンバー

Purpose

研究目的

  1. 研究の背景と目的

    佐鳴湖は静岡県浜松市に位置し、上流側の段子川や新川を通じて市街地に降った雨水や生活排水が流入する。そして、新川(放水路)から浜名湖へ流出する。水深は平均2mと浅く、小さな汽水湖である。また、佐鳴湖の湖岸は、葦などの植物が生い茂る地点や砂地が多い地点など多様である。その利活用は、漁場や市民がランニングや散歩で使う遊歩道、憩いの場となる市民公園などである。しかし、過去(2001~ 2006年)には、流入河川の影響により、全国の湖沼水質調査結果(公共用水域の水質測定結果)でCODの年間平均値が全国で最も悪かったなどの背景があり、国や地方自治体、市民団体なども含め、水質改善の努力が続けられた。現在では、環境整備も進み、水質は改善傾向にある。一方、近年新たな人為的汚染物質としてプラスチックによる環境汚染が注目されているが、佐鳴湖湖岸におけるプラスチック蓄積状況を詳細に調査した事例は見当たらない。

    本研究では、市民が日常的に接する湖岸において、プラスチックゴミがどの程度蓄積しているのかをサイズ別に分けて、調査し、その実態を明らかにすることを目的とした。

  2. 調査・分析方法

    調査地点(図1):佐鳴湖の湖岸の5地点(St.1流入河川下、St.2佐鳴湖公園、St.3放水路、St.4 船着場、St.5せせらぎ公園)である。

    プラスチックの計測方法:調査対象とするプラスチックは次の3つに分別して、その蓄積状況を調査した。試料A: 5mm以上のプラスチック、試料B: 5mm以下1mm以上のマイクロプラスチック(MP-Large)、試料C: 1mm以下0.42mm以上のマイクロプラスチック(MP-Small)である。試料AおよびBは、目視で各試料からプラスチックをピックアップし、数量を計測した。試料Cは、蛍光顕微鏡(写真3)で計測を行なった。試料Cは、密度分離、ろ過、フェントン反応によりMP-Smallを選別し、Nile Red染色を行った後、蛍光顕微鏡で検出した(図2)。回収実験は、約200-400 mm PE(市販品)を用いて実施した。

    図1 サンプリング地点 St.1 流入河川下, St.2佐鳴湖公園、St.3 放水路、St.4 船着場、St.5せせらぎ公園
    写真1 試料の採取範囲
    写真2 試料の分画
    写真3 KEYENCE オールインワン蛍光顕微鏡BZ-X1000
    図2 実験フロー
  3. 実験結果

    試料AおよびBの調査結果を表1に、試料C (MP-Small)の調査結果を表2に示す。

    試料AとBは、試料Cに比べて比較的大きく、目視できるゴミである。これらの比較的大きなゴミは、St.1とSt.5などの湖岸に植生や岩などの物理的障壁があるところに滞留していた。(写真4)

    一方、目視できない小さなゴミMP-smallの湖岸表層泥に含まれる数は、表2で示すように、調査地点によって、有意な差は観察されなかった。

    写真4 草の上の滞留したゴミ
    表1. 試料A,Bの1m2あたりのプラスチック蓄積量
    表2. 試料C(MP-Small)の1m3あたりの蓄積密度
  4. 考察

    調査地点St.1とSt.5は、試料AとBの滞留量は比較的多い傾向を示した。湖岸に植生が繁茂し、岩などの構造物が多く存在すると、プラスチックの堆積が促進される環境にあると考えられる。一方、目視では存在が確認しにくい試料C (MP-Small)の 1 mm以下のマイクロプラスチックは、調査地点のどの表層泥でもほぼ同濃度で検出されたが、放水路付近ではやや高い値を示した。

    統計的に有意な差はでなかったが、放水路付近では、湖水全体に分散する微細なMP-Smallが流出する方向へ流動することにより、放水路へ集積し、湖岸表層泥に蓄積する可能性も推定される。今後、より詳しい調査により、湖水の流れによるMP-smallが表層泥や排水に影響を与えるのか詳細な検討が期待される。

Results

研究成果

結論

佐鳴湖の湖岸では、目視可能なサイズのプラスチックごみが、湖岸の植生等による物理的障壁の影響により、蓄積しやすい傾向が認められた。一方、佐鳴湖の表層泥中のMP-Smallは、流出口(放水路)付近でやや高い濃度を示し、湖水の流動特性が影響している可能性が示唆された。

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