Results
研究成果
河川調査グループ
Research member
研究メンバー
- 大塚 佳臣【東洋大学総合情報学部 教授/博士(工学)】
Purpose
研究目的
「水辺のすこやかさ指標(みずしるべ)」は、5つの軸からなる20の項目を主観的に評価することで、対象となる水辺を、五感をもとに評価すると同時に、観測者による評価の違いに着目して、多様な水辺の見方や価値観を浮き彫りにし、それらについて話し合うことで対象となる水辺の理解を深めるツールとして利用されている。
本テーマでは、埼玉県立杉戸高校理科部が活動主体となり、大落古利根川とその支川(埼玉県杉戸町・宮代町)をフィールドとして、水辺のすこやかさ指標による水辺の評価を行い、部員の水辺のすこやかさ指標の習熟ならびに水環境評価の視点の涵養を目指した。水辺のすこやかさ指標による評価を行うと同時に、各種水質項目の分析、同水域の水生生物調査を行い、水辺のすこやかさ指標による定性評価と科学的情報の関係を考察することで、上記の目標の達成を図った。
また、近年水域での汚染が社会問題となっているMPsについて、「ぷらウォッチ」を用いて、その存在に関する定性的な分析を行うと同時に、比重分離法によりMPsを回収し、地点ごとの存在量を測定した。これらにより、すこやかさ指標や水質項目とあわせて、同水域におけるMPs汚染の状況を確認することで、大落古利根川とその支川の水環境の姿を総合的に把握することを目指した。
研究方法
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調査対象:大落古利根川(およびその支川)
大落古利根川は、埼玉県東部を流れる利根川水系中川の支流(一級河川)で、江戸時代初期の「利根川東遷事業」以前は利根川の本流であったが、現在は主に農業排水路として機能している。全長は約26.7kmで、杉戸町、宮代町、春日部市、松伏町などを経由し、中川に合流する。4月から10月は農業用水(葛西用水)として利用され水量が多いが、冬場は大幅に減少する。
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調査
夏季(7月)冬季(12月)に、下流から古川橋〜万願寺橋〜和土橋〜中落堀川(運動場前)の順に「水辺のすこやかさ指標」による川の観察・評価を行うと同時に、図1に示す地点で河川水サンプリングを行い、パックテストによる水質測定(COD、BOD、N-NH4+、N-NO3-、PO4-)、透視度計による透視度、測器によりDO、ORPを測定した。また、エッグマンパージによる採泥を行い、MPsの定性分析用のサンプルに供し、「ぷらウォッチ」によるMPsの定性分析ならびに定量分析を行った。
Results
研究成果
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水辺のすこやかさ指標による対象地域の評価
2024年度の調査結果(全体での評価平均値)を図2に示す。同じ河川であっても、地点や季節によって評価が違うことが確認された。全体として、冬季で評価が高い理由として、冬季は透明度が低く、浅いため、川底が見えることから水が綺麗に見えること、冬期は水鳥が多く見られること、7月の調査日は酷暑で人通りがみられなかったことが挙げられる。
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MPsの定性・定量分析
「ぷらウォッチ」によるMPsの検出は、比較的大きな粒子は可能であったが、小さいものは困難であった。その理由として、染色条件やスマートフォンのカメラの性能(スペックが高すぎる)の影響が考えられ、最適条件を得るに至らなかった。
定量分析は、夾雑物を除去した後、酸化処理により有機物を分解し、比重分離法を用いてMPsを分離した。地点別の河川底質5g(dry)あたりのMPs存在量を図3に、季節別のMPs存在量を図4に示す。地点②③は流速が低いこと、冬季は流量が減少することから、MPsが沈殿・滞留しやすいことが考えられた。 -
高校生に対する水環境教育
パックテストに加え、夏季はBOD、SS、冬季は窒素・リン成分濃度の分析を東洋大学内のラボで行った。それら結果と水辺のすこやかさ指標の結果と合わせたディスカッションの中で、見た目の水のきれいさは一致しないという点が大きな論点となり、水環境を総合的な視点からとらえることの意義の理解が進んだ様子がみられた。
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水辺のすこやかさ指標へのMPs導入の意義と課題
MPsの定量分析の結果から、河川の流速・流量とMPs存在量との関連が予見された。MPsの存在量確認は河川の特徴と環境汚染の関係を考える際に、新たな視点を与えるという点で有用であると言える。「ぷらウォッチ」は利用が簡便である一方で、設定が予想以上に難しく、また、粒径の小さいものは検出が難しいことから、水辺のすこやかさ指標への導入にあたっては、他の手段を検討する必要がある。