多様な水環境への水辺のすこやかさ指標の展開と深化

Results

研究成果

水辺のすこやか指標の干潟調査への適用

Research member

研究メンバー

Purpose

研究目的

マイクロプラスチック(microplastic:MP)とは,直径5mm以下の微細なプラスチックごみのことを指し,汚染物質として国内外で生態系に深刻な影響を及ぼしており,特に海と陸の境界に位置する干潟生態系の保全においては重要な課題となっている.本研究では,千葉工業大学先進工学部生命科学科3年生を対象に,卒業研究配属先の研究室ごとで実施する生命科学応用実験(前期5S)および卒業論文準備実験(後期6S)の一環として,フィールドワークの基本的なスキルを修得することを目的として,東京湾最奥部に位置する人工的自然干潟である「谷津干潟」(千葉県習志野市)および自然的人工干潟である「ふなばし三番瀬海浜公園」(千葉県船橋市)を対象に,干潟版水環境健全性指標(WESI-TF)による視覚的な水環境評価と併せて簡易MP検出キット「ぷらウォッチ」および比重分離法を用いたMP検出を行い,双方の結果より,総合的な干潟環境評価を実施することを試みた。

 

研究方法

  1. 調査対象:谷津干潟

    谷津干潟は,千葉県習志野市谷津および秋津にある約 40haの人工的自然干潟である.千葉県の東京湾岸の干潟は,そのほとんどが1960年代から1970年代にかけて千葉県企業庁によって次々と埋め立てられ,工業地や住宅地として開発されたが,習志野市谷津地先の干潟は昭和放水路計画により旧大蔵省の所有であったために埋め立てを免れ,埋立地の中に2本の水路で海とつながる池の様に残された。その後,埋め立ての計画は持ち上がったが,東京湾に飛来するシギ類,チドリ類,カモ類といった渡り鳥の希少な生息地になっていることが指摘され,また保護活動家による重要性の宣伝活動や清掃活動によってその重要性が広く市民の間でも認知されたため,1988年に国指定谷津鳥獣保護区(集団渡来地)に指定され(面積41ha,うち特別保護地区40ha),さらに1993年6月10日にラムサール条約登録地に登録された。その歴史的経緯から,谷津干潟はほぼ長方形という不自然な形状で,潟湖化干潟ともいうべき形状を有している。さらに干潟の四方は宅地化・都市化が進んでおり,干潟の上には高架橋が建てられJR京葉線,東関東自動車道,国道357号線が通っている。

  2. 調査対象:ふなばし三番瀬海浜公園

    三番瀬は,干潟としては東京湾奥部最大の面積を誇る前浜干潟であり,多様な生物が生息し,独自の生態系を形成している。ふなばし三番瀬海浜公園は,東京湾最奥部に残された自然豊かな干潟「三番瀬」に隣接した海浜公園であり,三番瀬再生計画に基づき埋め戻し造成された自然的人工干潟である.都心から一番近い潮干狩り場としても知られており,毎年4月から5月にかけて多くの来場者で賑わっている。現存する三番瀬は,新浦安の埋め立て地の東沖に位置する,江戸川(江戸川放水路)の河口付近の干潟および浅海域を指し,船橋市,市川市,浦安市,習志野市の沿岸に接する。旧江戸川から供給される土砂によって,旧江戸川河口一帯の前置斜面の前浜干潟および浅海域に広く干潟や浅海域が形成され,現在の三番瀬は,その一部が埋め立てを免れて現存している状態である。東西5,700m,南北4,000mの範囲に広がっており,水深1m未満の面積は約1,200haである。水深5mまでの海域を含めると面積は約1,800haに達する。千葉県企業庁によれば,以浅の範囲は陸岸から沖合3~4kmの広い範囲にまで広がっており,海底勾配は1/1,000程度と非常に緩やかな勾配で傾斜している。現在,大潮時に干出する面積はそのうち140haであり,かつての干出域が地盤沈下したものと考えられている。

  3. 実施内容

    「みずしるべ(環境省)」をアレンジした干潟版水環境健全性指標(WESI-TF)(表-1)を用いて,夏季および冬季の年2回,谷津干潟(潟湖化干潟)と三番瀬(前浜干潟)における水環境健全性評価を実施した。調査人数は20名とし,調査は夏季(6月)・冬季(12月)の2回実施して季節的変化の影響についても検討した。調査記録用紙は従来の手書き用紙に加え,googleフォームのアンケート機能により作成して各自のスマートフォンで回答を入力できるようにした。

    干潟底泥中のマイクロプラスチックについては,ぷらウォッチ(HORIBA,染色液とスマートフォンでMPを観察する簡易キット)および比重分離法により検出した。試料は,①谷津干潟(バラ園前,泥サンプル),②三番瀬地点A(砂浜,砂サンプル),③三番瀬地点B(海辺付近,泥サンプル)の3地点から採取した(図-1)。ぷらウォッチは,各地点より採取したサンプルをエタノールにより洗浄した後,染色液(ナイルレッド溶解液)で染色し乾燥させて観察した.比重分離法は,サンプルを研究室に持ち帰り,70%NaIおよび過酸化水素水を用いてMPを分離・回収し,実体顕微鏡にて観察した。また,両手法におけるMP検出結果について比較した。

図-1 調査地点 ①谷津干潟 ②ふなばし三番瀬海浜公園A ③ふなばし三番瀬海浜公園B
表-1 干潟版水環境健全性指標調査評価アンケート項目

Results

研究成果

水環境健全性評価では,谷津干潟と三番瀬のいずれにおいても周辺に生息する生物の減少により,夏季と冬季に差がみられた.谷津干潟は「水の利用可能性」の項目において夏季に比べ冬季が低い評価となり(図-2)。三番瀬は夏季と冬季で「水の利用可能性」と「快適な水辺」の評価が逆転する結果となった(図-3)。いずれの干潟でも夏季に比べ冬季では草木が減少したことで観察される生物が減少して「豊かな生き物」の評価が低下したものと推測された.

MP検出量は,いずれの調査地点においても冬季に比べて夏季に多くなった(図-4,図-5)。地点②三番瀬AにMPが多く,地点①谷津干潟では年間を通してあまり検出されなかった。底泥中のMP現存量は,地点・季節によって異なる検出結果を示し,人の出入りの多い季節・場所に大きなMPが多くみられ,MPの検出数は水域ごとの環境特性や利用状況を反映していることが示された。また,比重分離法との比較から,ぷらウォッチを高精度化するための改善点が確認され,サンプルの粒子サイズによる観察量の減少や染色呈色の低下の問題,検出に利用するスマートフォンの写真アプリについても機種や撮影モードの設定など改善の余地があると考えられた。

水環境健全性評価およびMP検出量の結果から,干潟の人為的利用や周辺環境の影響が示唆された。

図-2 谷津干潟の水環境健全性評価結果
図-3 ふなばし三番瀬海浜公園の水環境健全性評価結果
図-4 谷津干潟におけるマイクロプラスチ ック検出結果
図-5 三番瀬におけるマイクロプラスチ ック検出結果

Tasks

今後の課題

Announcement results

発表業績

Rreferences

参考文献

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