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2009-2014

戦略的創造推進事業CREST

気候変動に適応した調和型都市圏水利用システムの開発

[代表:古米 弘明]
研究領域

「持続可能な水利用を実現する革新的な技術とシステム」

研究課題

「気候変動に適応した調和型都市圏水利用システムの開発」(2009-2014)

概要

人口が集中するアジア大都市圏では、安全な都市用水を安定的に供給することが求められています。しかし、現在依存している水資源は脆弱であり、気候変動の影響を受けてさらに水資源の局在化が進行すると、水資源の安定的確保がますます困難になることが懸念されます。水資源の局在化に対応し、安全で安定な都市用水を確保するためには、河川水やダム水などの「表流水」に加えて、都市に存在する貴重な水資源である「雨水」、「地下水」、下水処理水を高度処理した「再生水」の利用可能性を議論することが必要です。しかし、都市の自己水源とも言えるこれらの“ユビキタス型水資源“については、水量・水質の情報が不足しています。また、気候変動によって流域の水資源がどのような影響を受けるのか、そして、その水資源と都市の自己水源とをどのように調和して活用すべきなどが課題となってきます。

そこで本研究では、従来の都市水利用システムを見直し、気候変動に適応可能な新たな都市圏水利用システムを提示することを目的とします。この都市圏水利用システムでは、多様な水資源の量・質と都市内における利用用途とのベストマッチを図ることにより、需要と供給の調和がとれた水資源の適正配置が達成されます。対象フィールドとしては、日本の荒川流域とベトナムのホン川流域という、モンスーンアジア圏にあって経済や人口の成長段階が異なる二つの都市圏流域を選定し、それぞれに適した水利用戦略を検討する予定です。

本研究の最大の特色は、多角的な観点から都市水利用システムを評価する総合的なアプローチにあります。研究ユニットは、①流域水資源グループ、②都市雨水管理・利用グループ、③都市地下水管理・利用グループ、④水質評価グループ、⑤都市水利用デザイングループ、の5つから構成されます。まず、①流域水資源グループでは、気候変動によって流域圏の気象が将来どのような影響を受け、表流水や湖沼水の水量・水質がどのように変動するのかを高度に予測し、これらの水資源の利用可能性を評価します。都市におけるユビキタス型水資源としては、次の2グループにより特に雨水と地下水に特化した研究を展開します。②都市雨水管理・利用グループでは、圧倒的に不足している雨水の水質情報を収集すると共に、雨水貯留や地下水涵養などのあり方を議論します。③都市地下水管理・利用グループでは、地下水水質の現状や涵養プロセスを明らかにすると共に、ヒ素などの汚染物質に対する革新的処理技術を開発します。④水質評価グループでは、①~③のグループが扱う表流水、雨水、地下水に加えて再生水も対象として、水の安全性に関わる「病原微生物の総合リスク」および、水利用上の水質安定性の指標となる「水質変容ポテンシャル」の開発を行い、水利用に有用な新しい水質情報の提示を目指します。⑤都市水利用デザイングループでは、①~④のグループが整理した都市水資源の水量・水質に関するデータを社会に還元することを意識し、環境コスト評価や利用者選好を考慮しながら水利用デザインのあり方を探ります。これらの5つのグループの成果を結合させることで、「気候変動に適応した調和型都市圏水利用システム」を開発し、社会に発信することを目指します。